幸せの天秤
それから、神崎さんのあいさつ回りに付き合わされる。

あたしはマリアたちにいつ会うかとハラハラしていた。

今のあたしを見て、彼らはどう思うだろうか、、、。

もしかしたら、あたしには気付かないかもしれない。

濃いメイクに露出の多いドレス、あの頃のあたしじゃ考えられない。


「神崎さん」

さっき挨拶をした齋藤さんがやってくる。

「こちらが今回ショッピングモールを手掛けた東条とマリア・ブラウンです」

「今回は素晴らしいものをありがとう」

神崎さんは2人に握手を求める。

2人はそれに答える。

「こちらこそ、ありがとうございました」

神崎さんのところのデザインを2人が手掛けたんだ。

どんなものになったかはわからないが、2人が手掛けたものなら
きっと凄く素敵なものになったに違いない。

東条さんはあたしには気付いていないようだが、
マリアはさっきからあたしをジッと見ている。

あたしは都合が悪くなり、東条さんに「ちょっと、お手洗いに」と
一言だけ告げ、その場から立ち去る。


お願い、、、、あたしだと気付かないで。

会場を出たときには変な汗まで掻いている。


あたしは近くにあった、ベンチに座る。



「レンリ」(英語)

懐かしい声が後ろから聞こえる。

振り向かなくたって、そこに誰が居るのかわかる。

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