幸せの天秤
「レンリ」(英語)

何も答えないあたしに、マリアはもう一度あたしの名前を呼ぶ。


「、、、久しぶり」(英語)

あたしはベンチから立ち上がり、振り向く。

マリアは涙を溜めながら、あたしに抱きつく。


「本当にレンリなんだね」(英語)

「、、、ごめん」(英語)

何を言えばいいのか、わからなかった。

でも、自然に口から出た言葉は謝罪の言葉だった。



マリアはただ、あたしを抱き締めたまま、動かない。


「レンリ、ごめんね。あの時、何も出来なくて」(英語)

マリアは何も悪くない。


「あたしが勝手に決めたことだからいい」(英語)


いつだって、あたしは誰かを傷付けてしまう。


「もう、書かないの?」(英語)

あたしから離れ、真っ直ぐにあたしを見つめる。

「もう、書けないよ。あんな事もあったし」(英語)


「もう一度アメリカに戻って一緒に、、、」(英語)



何もかも無理なんだよ。

もう、何もかも今更なんだよ。


「マリア」(英語)

東条さんが、マリアのことを呼ぶ。

会場にいない、マリアを探しに来たのだろう。



「東条さんが呼んでる。あたしはもう書く気はないから」(英語)


あたしはマリアにそれだけ言い、会場の中に戻る。


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