幸せの天秤
「待って、レンリ」(英語)

会場のドアに手を掛けた時に、マリアに呼び止められる。

「レンリ?!」(英語)

東条さんも、あたしを見る。


「レンリ。もう一度一緒に書こうよ」(英語)

書きたいよ。

マリアと東条さんと一緒にもう一度、仕事したいよ。

でもそんなこと、どんなに願っても遅いんだよ。

あたしは落ちる所まで、落ちちゃったから、、、。



「あたし、もう、、、、書きたくない」(英語)


あたしはそう言い、今度こそ神崎さんの所に戻った。


「遅かったな」

「ごめんなさい、あまりに広くて迷子になっちゃって」

「変な虫でも寄ってきたのかと思って、心配したよ」


神崎さんはあたしの腰に手を回す。

会場に戻って来た、マリアと東条さんと目が合う。

あたしはすぐに視線を反らす。

こんなところ、見られたくない。

でも、これで2人が軽蔑してくれればいいとも思った。


「声を掛けてくれる方がいればいいですけど、あたしなんかにそんな方いませんから」

「お前はいい女だぞ」

「そう言ってくれるの、神崎さんだけですよ」


そんな嘘すら、今のあたしは簡単に付ける。

思ってないことだって、言える。


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