幸せの天秤
家に着き、ご飯もお風呂も終え、デザインの本を開く。


こんな時間に家にいるのは、いつ振りだろうか。

アメリカに居た時は、日付が変わった頃に帰ってくるのが当たり前だった。


それが習慣だったあたしは
こんな時間に家に居て何をすればいいかわからない。

休みの日は朝から晩まで寝ていた。


でも、仕事が楽しくて楽しくて、自分の時間が欲しいだなんて考えたことすらなかった。


逆にあの頃のあたしにとっては、それが居心地が良かった。


なのに、こんな毎日が続くと考えたら、先行きが不安だ。


世の中の人は、こんな時どうやって過ごしているのだろうか。



友達と過ごしたり、好きな人一緒に居るのだろうか。


友達どころか知ってる人すら、日本には部長と彼くらい。


7年間、仕事三昧だったあたしの携帯に入ってる連絡先は
仕事の関係者ばかり。

プライベートで付き合いがあるのマリアくらい。


自分が望んで日本に来たくせに、今更少し後悔している。





静かな部屋に携帯の着信音が鳴り響く。


「レンリ!!」(英語)

電話に出ると、懐かしい声がする。



「マリア」(英語)

つい一昨日、マリアと会ったくせに、懐かしく感じられる。


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