幸せの天秤
それから用もない癖に、朝と晩に涼己はあたしの部屋に来る。

隣の部屋ってこともあるのだろうけど、、、。


「おはよう、これから仕事行ってきます」とか
「今帰った~」とか、ただそんな一言だけを言いに、、、。

あたしの方が遅く帰ったり、朝いなったりすると
ドアに付箋が張ってる。


今日もいつものように部屋にやってくる。


「おはよう」

なんて朝っぱらから、爽やかな笑顔で。

「、、、元気だね」

あたしは夜中に帰って来て、正直眠い。

「今日って、予定ありますか?俺、仕事休みなんです」

特に予定のないあたしは、「どうぞ」と部屋に上げた。


あの日から、涼己が部屋に入るのは初めて。

お互いに時間が合わなかったから。


「約束覚えてますか?」

「約束?」

涼己から言われて考えるが、全く思いつかない。


「やっぱり。デザインの書き方教えてくださいって言ったじゃないですか」

確かに言われたが、約束した覚えはない。


「約束したっけ?」

「俺はお願いしました」

相変わらず、強引な男だ。


「いつも、急なんだもん」

「だってレンリ、連絡先教えてくれないし」

そういう、肝心なことは後回し。

あたしは涼己に連絡先を教えた。


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