幸せの天秤
「そういや、携帯鳴ってたぞ」

卓真にそう言われ、鞄の中から携帯を取り出す。

相手は涼己からで。

「おはよう」と「デザイン部長にOKもらえた」と2通のメールが入っていた。


あたしは

「おはよう。よかったね」と返信を送る。


「メール打てる、客が居たんだな」

「客じゃない。知り合いから」

卓真から聞いてきたくせに、特に興味もないのか後は何も言わない。



「卓真さ~、恋とかしたことある?」

あたしは、また卓真の隣に座る。


「なめてんの」

書類から目を逸らさず答える。


「そういうの興味ないのかな~って」

「俺だって、若い時代があったつうの」

「昔~、昔~?」


書類で軽く頭を叩かれる。

「昔話みたいに話すな。で、恋がどうしたんだよ」

「どうやって、恋始めるの?」

「なんだ、その中学生みたいな恋愛相談」

鼻で笑われる。

「好きになったら、勝手に始まってんじゃね?」

「卓真ってあたしにそうやって恋したんだ」

卓真から、さっきより冷たい目で睨まれ盛大にため息までつかれた。
< 149 / 249 >

この作品をシェア

pagetop