幸せの天秤
「すいません、部長。
英語で何話しているかわからなくて、変わって貰っても良いですか?」


あたしが東条部長のデスクに着いたと
同時に、女の人が申し訳なさそうに言う。


「お先にどうぞ」

「すまない」


部長が電話を受け取る。


「もしもし。、、、、なんだ、マリアか。どうした」(英語)


電話の相手はどうやらマリアのようだ。


話の内容はわからないが、だんだん部長が機嫌が悪くなるのがわかる。

あたしは嫌な予感がして、静かに部長を見守る。



「あ゛ぁ?レンリにやらせたのか」(英語)

自分の名前が出たことに、嫌な予感が的中。


部長の大きな声に、部署中が静まり返る。

何事かというように、みんなが部長の様子を伺う。


「マリア、レンリを日本に行かせること許可したよな。
そっちの仕事をレンリにやらせるってどういうことだ」(英語)


やっぱり、まずかったんだと部長の態度を見て実感する。



逃げ出したい、、、。


「おい、マリアまだ話は、、、」(英語)


どうやら、マリアは話の途中で電話を切ったようだ。


マリアと部長はアメリカでもよくぶつかっていたが、
大体はマリアの無茶な仕事配分に対して、東条部長が心配してのことだ。


「レンリ!!」


アメリカでは部長にそう呼ばれていたが、
ここは会社ということ部長はあたし「片瀬さん」と呼んでいた。


その部長があたしを「レンリ」と名前で呼ぶということは、相当怒っているのだろう。



部長が名前で呼んだことにあたしに視線が集まる。

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