幸せの天秤
そのままと言われても、全くわからない。


「わからないって顔だね。君のことを探してたのは俺の親父。
まぁ、君の父親でもあるけど」


あたしの父親、、、?


トントンっと、ノックされ、秘書の方が入ってくる。

「社長、会長がいらっしゃいました」

「通して」


彼が秘書にそう言うと、秘書と入れ替わりに男の人が入ってくる。


父親の記憶なんてほとんどない。

離婚する前だって、家に帰ってくるのは月に1度あるかないか。

帰ってくる時は、やたらと高そうなブランドのバックやアクセサリーを
あの人、、、母親に買って来てたっけ。


家にいないのが当たり前だった父親、、、。

それでも、あの人がいつも
「レンリのお父さんは、凄い人なんだよ。だから、レンリもお勉強しようね」
なんて、写真を見せながら言ってたっけ。



今更懐かしむ思い出でもない。


でも目の前にいる人は、あの人からよく見せられた写真の男だった。



「レンリ、、、ずっと、会いたかったぞ」

そう言い、彼の隣に座る。


会いたかったなんて言われても、あたしに親なんて最初からいないも同然。


「今まで、いろいろ大変だっただろう」

この人はあたしの何を知っていて言っているのだろうか。

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