幸せの天秤
「ううん、大丈夫」

それは先生に言った言葉なのか、自分に言い聞かせた言葉なのかわからない。


「とりあえず、ご飯食え」

止まっていたあたしの箸を指差しながら言う。


「もう、お腹いっぱい」

あたしは箸を置く。


「はぁ~。まだ、全然食べてないだろう」

「もう十分」

先生は渋々「わかった」とお膳を持って部屋を出て行く。

あたしはトイレに行き、今食べたものを吐き出す。

気持ち悪い、、、。


「やっぱり」

声のした方を振り向くと先生がいる。

あたしは笑って誤魔化そうとすると、睨まれる。

「ここ女子、トイレですけど」

「だから、なんだ。トイレだろうが、患者がいたら俺はどこまでも行く」

こういう時は先生になる。

普段もちゃんと先生をしてるのかもしれないけど、、、。


「今度から、ちゃんと食べますよ~」

「いい大人なんだから、ガキみたいなこと言うなのよ」

なんて、呆れられる。

あたしはこれ以上、文句を言われたくなくて、足早に病室に戻った。

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