幸せの天秤
お昼過ぎに、検査の順番が回ってくる。

歩けるのに時間が掛かるからと言われ、車イスに乗らされた。

いろいろ説明されたが、よくわからなかった。


「お疲れ様でした」

やっと検査が終わった。

「検査ばっかで飽きちゃった」

「片瀬さんって、本当に面白いですね」

車イスを押す看護師さんが言う。


「面白くないよ。あ~早く、退院したい」

「片瀬さん、ラッキーなんですよ?担当が相川先生なんて。
他の患者さんなら、帰りたくないって言う人ばかりですよ」

あの医者のどこがそんなにいいのだろうか。

「看護師さん、先生のこと好きなの?」

「あ、あたしは、違いますよ」

彼女を見ると、頬を赤くしている。

「好きなんだ~」

「も~、片瀬さんったら茶化さないで下さいよ。ほら、病室着きましたよ」

病室のドアを開けると、先生と知らない人が3人いる。


「先生、後お願いします」

看護師さんは先生にあたしを渡すと、病室を出ていく。

病室の空気が重い。

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