幸せの天秤
竜崎さんが病室を出て行って、少しして先生がやって来た。


「また、食べなかったのか」

まだ、テーブルに上がっているご飯を見て言う。

竜崎さんと話していて、忘れていた。


「、、、見てるだけで、吐き気がする」

「気持ちはわかるが、体重が増えないと退院は許可できないぞ」

医者として当たり前のことを言っているのはわかるが、食べられないものは食べられない。


「はぁ~。少しずつでもいいから食べろ」

「はいはい」

「はいはいってお前な。で、どうだった?彼らに会って見て」

マリアさんや東条さんは、少し気を使う、、、、。

でも、竜崎さんは何か違う。

言葉に表せないが、、、知らない人だって思えなかった。


「、、、悪いことしちゃったかなって」

「なんで」

「あたしは何も知らないけど、あの人たちはあたしと友達だったんでしょ?
なら、傷付けちゃったかなって」

少なくとも、マリアさんを泣かせてしまった。



「忘れた人間より、忘れられた人間の方が辛いからな」

やっぱり、、、。

竜崎さんはこれからも来るって言ってたけど、会わないほうがいいのかな、、、?


「でも、記憶を取り戻したいと思うのなら、彼らの協力は必要だ。
思い出したいって望むなら、向き合わないと」


あたしの勝手で、いいのかわからない、、、けど、
思い出したい、本当の自分を。

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