幸せの天秤
見えないもの
次の日、外出許可を貰って、久々に外に出た。


とりあえず、住んでいた家に戻る。

電車にも乗れる。

家の場所だって、ちゃんと覚えてる。

でも家の中に入ったら、別の人の部屋のように感じた。


部屋には全く記憶にない、デザインが散らばっている。

これは、あたしが書いたものなのだろうか?

一つ、一つ、手に取って見るが、わからない。


デザインをテーブルの上にまとめ、部屋の中を見渡す。

生活観のない部屋、、、。

ここで、あたしは生活してたんだ。

何をして、どうやって暮らしてたんだろう。


タンスの中を開けると、あたしの名前の通帳がある。

中を見てみると、見たこともない金額が書かれている。


その金額が増え出したのは今から5年くらい前からだ。

このお金はどうやって、あたしは稼いでいたのだろう。

デザインの仕事はそんなに儲かるのだろうか?


益々、自分が誰なのかわからなくなる。


部屋の中をいろいろ物色したが、あおとの写真すら出てこなかった。

マリアが言ったように、あたしとあおは本当に終わってたのかもしれない。


あおがあたしが入院して病院に来ない自体おかしなことだ。

普通付き合っていたのなら、一番に病院に来るはずだ。

それが、、、、答えだったのに。

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