幸せの天秤
ー レンリ ー


ぐっすり寝たおかげで、目覚めはすっきりとしていた。

いつものように、看護婦さんがご飯を持って病室に来る。


入院して、それが当たり前になっている。


ご飯を食べなきゃ退院は出来ない。

ここに居たら、毎日マリア達が来る。

正直、思い出せない自分がマリア達と過ごすのが嫌になっていた。


ご飯、、、、あ!!

太れば、退院できる。

あたしはご飯を全部ゴミ箱に捨て、財布を持って売店に向う。

高カロリーの食べ物を片っ端から買い込み、ひたすら食べた。

今まで空っぽだった、胃が悲鳴を上げている。

それでも、これしか方法はない。

少しでも体重を増やすために、無理やり体に流し込む。


その後は大量の吐き気に襲われる。

そのおかげで、1週間が経った頃には3キロも体重が増えていた。




「最近ご飯、ちゃんと食べてるみたいだね」

回診に来た先生が言う。

「あと、何キロ太ったら、退院できる?」

「そんなに焦らないで。しいて言うなら、あと5キロは欲しい」

後、5キロ、、、。

その数字があたしをものすごく遠く感じる。

でも、後5キロであたしはここから出れる、、。

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