幸せの天秤
その日珍しく、面会の時間になってもマリアは来ない。

いつも面会時間が開始の時には、やってくるのに、、、。


忙しいのか、、、な。

そう、思っていると病室のドアが開く。

入って来た人を見て、言葉が出ない。


「よっ」

会いたいと思った時は、会えなかったのに、、、、。

そうしてこの人が、今目の前にいるの?


頭の中が混乱する。


「レンリ」

叶わなかった願いが、今現実になってる。

「、、、、あ、、お」

あたしが大好きな笑顔をくれる。

「おう」

あおは傍にある椅子に座る。


会いたいとは思ってた。

でも、会ったら何を話せばいいかわからない。

あたしが知っているあおより、少し背も伸びていて、髪形だって変わっていて、、、。

でも、あの頃と何一つ変わらない、大好きな笑顔。

あたしを包み込んでくれるようで、落ち着く。


人は驚くと言葉が出ないって聞いたことがあるけど、本当かもしれない。

現に今、あたしはあおを前にして何も話せない。

あんなにあおを求めていたのに、聞きたい事だっていっぱいあったのに、、、。

そんなことはどうでも良くて、、、。

ただ触れたい。

あおの温もりに包まれたい、、、。

あたしはあおに抱きついた。

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