幸せの天秤
「そんなに気になるなら、自分から連絡してみたら」

先生からそんなことを言われたが、なんて連絡すれば良いかわからない。


「邪魔しちゃいけないから、やめとく。いつ退院できる?」

「また、それ?う~ん、このまま行けば来週には退院できるんじゃないか」

最近、毎日のように先生に退院の日を聞いている。

いつも「そのうち」と、誤魔化されていたのに先生の言葉を聞き、嬉しくなる。


あたしは先生が出て行くと、あおにメールを送る。

「来週には退院できるみたい!」と送ると「よかったな」とすぐに返信が返ってくる。


そんなことでも、幸せを感じる。

この先何があっても、あおが傍に居てくれたら大丈夫だと思えてしまう。

恋って、それぐらい力があるんだ。


だから、これからに不安なんてなかった、、、、この時は。

臆病なあたしが、居なかったから。


都合の良いことしか、覚えてなかったから。


目が覚めてウジウジしてたあたしからは想像出来ないくらい、前向きだったと思う。





幸せだと1日、1日があっという間に感じる。

長くて苦痛だと思ってた入院生活も今日で終わり。

退院の日はあおが仕事を休んで、迎えに来てくれた。


「退院しても、ちゃんとご飯は食べること」と、親みたいなことを先生に言われた。

親にそんなことを言われたことはないが、、、。

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