幸せの天秤
目の前にはその人の模型から、目が離せない。

考えても、真っ暗な闇が邪魔してたどり着けない。


「それ、俺の作品」

見たこともない人があたしに話しかけてくる。

俺の作品ということは、彼が伊藤哲也という人なのだろうか。


「そ、そうなんですか。凄いですね」

なんだろう、、、この人にはあまり関わりたくない。


「他人行儀だね」

そんなことを言われても、あたしはあなたを知らない。


「これ、作ったのはレンリちゃんだよ」

、、、、あたし?

でも、名前は伊藤さんになっている。

意味がわからない、、、。


「何言ってるんですか。あたし、デザインの書き方すらわからないですよ」

「本当なんだ。記憶喪失って」

伊藤さんは、あたしをあざ笑う。


「教えてあげようか?東条たちも知らないこと」

この人、、、、怖い、、、。

逃げ出したいのに体が動かない。

あおのことを探すが、見つからない。


知りたくなんかない、、、。

あたしは今、幸せなの、、、壊さないで。

あたしの中にある真っ暗な闇が動き出そうとしている。


やめて、、、お願い。

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