幸せの天秤
気がついたら、模型を地面に叩きつけていた。

_ガシャン_

その音がやけに耳に響く。

夢から覚めるような、あたしの中の何か崩れるような音にも聞こえる。

ポッカリ抜けてた時間が、、、記憶が走馬灯のように蘇る。

思い出せなかったのが嘘のように、バラバラだった記憶のピースが次々とハマっていく。



こんな記憶なら、思い出したくなかった。



「大丈夫ですか」

誰かが、そう言う。

周りから、たくさんの視線が感じる。


「、、、すいません」

「困りますよ。大事な作品なのに」

壊れた作品が、まるであたし自身のように見える。

「気にしないで下さい。僕は大丈夫ですから」


「レンリ!」

マリアがあたしに元に来る。

あおや東条さんもやってくる。

「よかったな、記憶喪失になって。記憶があったら東条たちと顔合わせなんて出来ないか」

「伊藤、どういう意味だよ」

東条さんは伊藤さんに掴み掛かる。

「本人に聞けよ、東条。まぁ、彼女に記憶があればの話だがな」

掴まれた腕を振りほどき、伊藤さんは歩いて行く。


伊藤さんが言ったように、みんなに会いたくなかった。

あんな汚れたあたしなんか知られたくない。
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