幸せの天秤
お母さんのことがあってから人と向き合うのが怖くて、
自分が傷付かないように他人に線を引いてた。

その線を初めて越えてきたのがあおだった。

あたしが知らなかった世界を教えてくれた。


「他の男のキスマーク付けてた」

そうだった。

あおのことが好きだったのに、その気持ちを誤魔化すように他の人と付き合ってた。


「そんなこと、よく覚えてたね」

「俺がレンリが見つける時はいつも、、、他の誰かが居る」

あおは気付いてるの?


「思い出したんだろ、全部」

「、、、どうして」

「レンリが伊藤さんの作品を壊した時、あの時と同じ顔してた」

あおがいうあの時っていつのことなんだろう。

考えても、思いつかない。


「あの時、、、って」

「レンリが部屋を出て行った時」

「え?」

「何もかも諦めたような、顔してた」

あおに、あたしはどんな風に見えていたんだろう。

あたしが思い出しているのに気付きながら、あおは何も言わなかった。


「レンリ、、、俺たちなんで別れたんだ」

あおは、あたしがあおに聞いた質問をあたしにする。

なんで、、、それは、、、。

「、、、、あおに幸せになって欲しかったから。
あたしね、、、赤ちゃん産めない体なの」

あの頃は言えなかった、、、。
< 241 / 249 >

この作品をシェア

pagetop