幸せの天秤
あたしは意を決してチャイムを押した。

部屋の中から物音が聞こえる。

今日は、部屋に居てくれた、、、。


「はい」と、ドアが開く。

卓真はあたしのことを見て驚いたが、すぐにいつものすかした顔をする。

「どうぞ」と部屋に入れてくれた。


「おじゃまします」と、中に上がる。

何も変わってない部屋の中。

あたしはいつも見ていた、ベランダに行く。

もう、ここに来ることはないと思っていた。

でも、あたしはここに居る。

この夜景が、目の前に広がっていることが現実だと言っているみたい。


「記憶がなくなっても、好きなものは変わらねぇんだな」

卓真だって、変わってないよ。

人が来てるのに、おかまいなしにそうやって仕事するところ。


「あたし、売春婦だったんだよ」

そのこと、卓真はどう思ってる?

今だから、聞けること、、、。


「知ってる」

「、、、お客さんだったから?」

卓真はあたしの始めてのお客さん。

ずるいのかもしれない、、、。

それでも、卓真の気持ちが知りたい。


「、、、あぁ」

「汚く、、、ない?あたし」




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