幸せの天秤
ナミダが流れる。


人前で泣いたのは初めてで、止めようとすればするほど溢れてくる。

なんで、あおの前で泣いてるんだろう。

あおは何も関係ないのに。


__ギュッ__


気が付くと、あおの腕の中にいた。


「泣かないでよ。レンリちゃんが泣いてると俺が辛い」


耳元で言われ、体の中で何かが疼く。


「あお。抱いてなんて言ったら困る?」

自分でも何を言ってるんだろうと思った。


だけど、あおに抱かれたいと思う自分を止められなかった。



あおは何も言わず、腕を掴み歩き出す。


アパートの部屋に入り、ベットに押し倒される。



「後悔しない?」

あおの言葉に頷く。



優しいキスをされた。

あおの体温があたしに伝わってくる。


それが無性に愛おしくて、あたしはあおを求めた。


これで、あおとの関係が壊れてもいい。

あんなに臆病になっていたのに、あおを求めずには居られなかった。




行為が終わり、あおに抱きしめられながら、眠りについた。


このまま時間なんか止まってしまえばいいと、初めて願った。



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