幸せの天秤
あおは抱きしめていた腕を緩めた。



「離婚届にはサインしておいたから、あお都合の良いときに市役所に出して」


あたしは必要最低限のモノをまとめる。


「荷物は早いうちに持って行くから」


あおは何も言わない。

あたしはそれを良いことに、あおの顔も見ずに玄関に向った。



「レンリ、ごめんな」

背中越しに聞こえる、あおの声。


何で、あおが謝るの、、、。


あおは何も悪くなんかないんだよ。


あおの言葉であたしは動けなくなる。


あおから、離れたくなんかない。


いっそ、あおに全部話してしてしまおうかと、思ってしまう。


きっとあおなら、それでも傍にいてくれる。


でもそれじゃ、あたしはただお荷物じゃない、、、。




あたしは振り返る。


「あたしが悪いの。ありがとう、あお。幸せを教えてくれて」


あおと目が合う。


あおの涙を見たのは、それが最初で最後だった。

あたしはどれだけ、あおを傷つけてしまったのだろう。


「レンリは何も悪くねぇ。守ってやれなくて、泣かせてごめんな」


「ばいばい、あお」


部屋を出た。


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