幸せの天秤
あの日以来、母親はあたしを避けている。


このままここに居ても、ダメだと思い、今からでも通える大学を探した。



やっと、見つけた大学がアメリカだった。


すぐに願書を送った。


ここからいなくなれるならどこでもいい。

アメリカなら偶然あおに会うこともない。


あたしにとって、全部好都合だった。




見事大学に合格してあたしは日本を離れた。

新しい土地に行けば、何か変われるような気がした。




おかげで、マリアとも知り合えた。

あたしに生きる希望を与えてくれた。


デザインしている時、あおと別れてから、初めて楽しいと思えた。

スキルが身につくにつれて、周りがあたしのことを認めてくれた。


あたしがあおを失って、得たものは建築家としている自分だったんだ。




もう後悔はしない。

ちゃんと自分の足で歩くんだ。





アメリカに行って、マリアというかけがえのない友達だって出来た。


何人かの人とだって付き合った。

そのたびにあおと比べて、また落ちて、、、。


そのたびにマリアはあたしを助けてくれた。



マリアはあたしに取って、道しるべだ。

マリアと肩を並べたいって、一緒に仕事をしたいって。


その反面、マリアが羨ましかった。

友達も、彼氏も、周りからの信頼もすべて持ってたから。




だけど、マリアもあたしと同じ人間だと思った。

大学を卒業して、マリアの事務所で働きだして2年が経とうとしていた頃、
マリアの婚約者が結婚式の前日、交通事故なくなった。


マリアがデザインした「アムール&エール」での、結婚式はなくなった。


周りはマリアを「可哀相だ」と言ってた。


婚約者の死後、マリアはデザインを書かなくなって、
ただただ婚約者の遺影を眺めているばかり。




まるで、あおと別れた頃の自分自身を見ているようだった。

思い出に浸って、ただの抜け殻状態で、生かされている状態。




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