幸せの天秤
この時、神様は本当に居るんだと思った。

あたしだけが不幸なんじゃないって、思えた。

マリアがデザインをしなくなって、数ヶ月が経っても、みんなマリアを同情してた。

部長でさえ、マリアにどう接していいか分からなかったみたいだ。




同情されたからって、何も変わるわけじゃない。


「ねぇ、マリアはもう書かないの」


あたしは遺影の前で涙を枯れ果たした彼女に言った。

周りはあたしの言葉に、「今はそんなことできる状態じゃないのよ」とか
「少しくらい、察しなさいよ」と怒られた。


「レンリはあたしを可哀相だと思わないの」


婚約者が死んで、初めてマリアが口を開いた言葉だった。


「可哀相だと思われたいの」


「、、、、、違う」


あたしはマリアを連れて、自分の部屋に向った。

2人きりで話したかったから。

「マリアは神様は居ると思う?」


きっと今のマリアなら「居ないと答えるだろう」


あたしの想像通り、首を振る。


やっぱり。


「あたしはいると思う。だって、マリアが傷付いてるから」


あたしの言葉にマリアは眉を顰める。


「あたし、全部持ってるマリアのことが羨ましかったから」


あたしはマリアに、あおとのことを話した。


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