幸せの天秤
「そうなんですか」


前の職場では、マリアとあたしだけは個人で作って居た。


マリアの指示で他の人と合同で作ることもあったが。



「片瀬さんは、どっちにも属さない。
合同でやらせる事もあるとは思うが、メインは1人で作業して貰う」


「1人だと時間が掛かりすぎるんじゃ。
部長でもデザインを完成させるのに1日だって掛かることだってあるのに」


桐谷さんが部長に聞く。


「これ。彼女が1時間半で仕上げた」


さっき手渡した、書類を2人に見せる。




「これでも、何か異論があるか」



部長の言葉に、2人とも何も言い返さなかった。


「じゃ、決まりだな。お前ら、うかうかしてたら
片瀬さんに仕事全部もっていかれるかもな」

部長は2人に追い打ちを懸ける。



2人は何も言わずに仕事に戻って行った。



「部長、いいんですか」



「あいつら、お互いに競い合うのは勝手だがいいものに拘りすぎて、
つまらねぇんだよ。片瀬さんみたいに作りたい物を作って欲しい」


良いものに拘るのは、けして悪い事じゃない。


あたしもマリアに一度、言われたことがある。


「レンリのデザインって、サンプルみたいでつまらない」と。


マリアや部長の作品を観て解った。



だって、2人の作品は生きてるから。


行ってみたい、暮らしてみたいと思わされる。





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