幸せの天秤
あの日から発作がなくなるどころか、日に日に発作の回数が増えている。

あたしは、誰にも気付かれないように、必死で隠し続けた。


いつ起こるか、そんなことばかりを考えさせられる。


おかげで、仕事に集中仕切れていない。



「、、、、、リ、レンリ」

「は、はい」


部長に呼ばれて、ハッとする。


今は、会社のミーティング中だ。

「すいません。この案件なんですけど、、、、」


仕事をこなさなければ、、、。







そのままじゃ、あたしはダメになってしまう。


「もう、行かない」と、決めたはずなのに、気が付いたら、
あたしの足は病院に向っていた。



「もう来ないんじゃなかった」


診察室に入るなり、こないだの医者が嫌味を口にする。


「こないだは、すいませんでした」

一応、こないだのことについて謝罪を言う。

「まぁ、君は来ると思ったけどね。で、最近はどう」

彼は医者として訊ねてきた。

あたしは最近のことを話す。



「そう。君が今、楽しいと思うことは何?」

楽しい、、、そんなことを考えたこともない。


「そんなこと、考えて過ごしてないので分かりません」


「楽しいとか、考えてすることじゃない。
質問を変えよう。君は何で生きているの」


「死ねないから」


あおと別れた時、生きる意味なんてなくした。

でも、あたしには死ぬことは出来なかった。

アメリカに行って、デザインの勉強をしている時はあおのことを忘れさせてくれた。


だから、日本に来ても何も変わらないって思ってた。

なのに、あおに会って、心にふたをした気持ちが溢れ出して、
止め方がわからなくなってしまった。


< 57 / 249 >

この作品をシェア

pagetop