幸せの天秤
その後、先生のカウンセリングを受ける。




「先生の名前、なんて言うの」

これから、付き合っていくならそれくらい知っておかなければ。

「君、ナンパしてる?」

「ち、違う。ただ、知らないから」


あたしが慌てると、楽しいそうにあたしの前に名札をかざす。


この人、あたしの反応を見て楽しんでる。

あたしは名札を見る。


「相川 総」


「正解。とりあえず、クスリを出しておくから、苦しくなったら飲んで。
まぁ、気持ちの問題が大きいから効き目はあまり期待できないけど」


そんなんで大丈夫なんだろうか。

「効き目あるか、わからないんですか」

「片瀬さんの場合は、心の問題だから。焦っても何も変わらない。
次は来週僕に会いに来てね。で、苦しくなったら、すぐに連絡して」


こないだと、同じように連絡先を渡される。


「普通、いくら担当医でも連絡先交換しないと思うんですけど」

「片瀬さん、可愛いから特別にね」


やっぱりこの人は信用ならないと思ったが、こないだのように捨てることは出来なかった。


「あれ、今回は付き返してこないんだ」

「誰かに男紹介してって言われたときに、有効活用させてもらいます」


あたしは、鞄にしまう。

そんなことを頼まれるような友達も居ないのに。

「願ってもないことだね。可愛い子、期待してる」


満更でもなさそうに言う。

「それじゃ、ヤブ医者さん」


そう言い、家に帰った。










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