幸せの天秤
社会人として、これがあたり前のことなのに感心してしまう。

ちゃんと、仕事と私情を割り切っている。


「最近は薬のおかげで、前よりは仕事をこなせています」

「あまり、薬を頼りすぎるのも活けないからね。
今は飲み始めたばかりだから効き目は良いが、だんだん効果が薄れていく。
そうなる前に、心の方も治療していこう」


確かに、今のあたしは少し苦しくなると、すぐに薬に手を出している。

それでも、発作がなくなった訳じゃない。


「気を付けます」

「素直でよろしい。最近、仕事の調子はどう?」

「前のようにとは言えませんが、大分こなせるようになってると思います」


前みたいに、、、、。

それがいいことじゃないこともちゃんとわかってるつもりだ。

部長も「普通の奴らよりは仕事をしてる」と言っていたが
前みたいにマリアや部長のようにこなしていた仕事が今じゃ出来ていない。

確かにアメリカに居た時だって残業をしていたが
仕事を余すようなことはなかった。


今のあたしは、普通の会社員と同じようにしかできていない。

それじゃ、マリアや部長とは並べない、、、。


「ストップ。また、悪い方にばっかり考えてたでしょ」

先生の言葉で、素に戻る。


「人間心配なことは1つ、2つあるものだよ。
けど、それだけが人生じゃない。悪いことの中にも良いことが必ずある」


本当に良いことなんてあるのだろうか、、、。
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