幸せの天秤
「今、良いことなんてって思ったでしょ」

先生にそう言われて、苦笑いをするしかなかった。


「じゃ、なんか変わったこととかなかった」


変わったこと、、、。

そう言われて、独立の話をする。


「それって良いことになるんじゃないのかな?」


良いこと?

前のあたしなら、すぐに受けていたかも知れない。

けど、今はそんな自信がない。


「だって独立って、
君が居る業界じゃ羨ましがられることなんっじゃないかな。
それに君が慕っている2人が背中を押してくれてるなら、尚更」

2人が独立の話をしてきてくれた事は、素直に認められて嬉しかった。


「、、、、不安なんです」

ちゃんとやっていけるのか、不安でしかたない。

せっかく2人が認めてくれたのに、それを裏切るようなことをしてしまったら
マリアや部長はあたしにきっと幻滅する。

そんなことに、、、、。



「やる前から、そんなこと考えても仕方ないんじゃないか?
それは君を信じてる2人にも失礼なことだと俺は思うけどな」


あたしは先生の顔を見る。

「だって、2人は君なら出来ると思ったから背中を押したのに
先のことばかり心配して、その期待に背を向けるのは失敗する以前に
君は2人のことを裏切ってる。
誰だって、先のことなんてわからないんだ。
うまく行ったらラッキー、悪く行ったら多イニングの問題だって、俺なら開き直る」

そう言う、先生を見て可笑しくなった。


こんなに悩んでる自分がばからしく思えたんだ。

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