芸術的なカレシ





「……は?」



スマホの画面を見て、私は絶句する。
夜の中で、くっきりとした白を放つスマホ。


そこには、あろうことか、拓からのラインが表示されていた。




拓史<「今日、映画館にいたのお前?」



「……」



一時はあんなに待ち望んでいた、拓からの連絡。
何度も何度もスマホをチェックして、何もなくて落ち込んで。


……そして、1ヶ月以上経った今。

え?
何なの?
何でそんなこと聞くの?



「そうだけど」


悴む指を懸命に動かして、返信する。
直ぐに概読。
そしてまた、返信。



拓史<「やっぱりかー
男連れだったから、違うかもと思ったけど」



……は?
いやいやいやいや、ちょっと待って。

何?
何の確認?


私は頭を整理するために、一旦スマホをポケットに突っ込む。
それから家の鍵を握りしめて、マンションのエレベーターの乗り込んだ。

エレベーターに乗っている間も、廊下を歩きながらも、鍵を差し込んでいる時も。
私の頭の中にはスマホの画面とクエスチョンマーク。


え?
えーっと。

別れた彼女が他の男と手を繋いで歩いてるのを見て。
そいでもって自分も女連れで。

え?
それで、あれお前だった?とか、聞けるの?
それって、どんな神経?
どんな精神状態なわけ?




『あんたが気にしてるほど、向こうは気にしてないのかもね』


明日香の言葉が、頭の中で甦る。







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