芸術的なカレシ






母親はまだ帰っていなかった。
部屋の中は真っ暗。
クリスマスなのだから、また女子会という名のただの飲み会でもやっているのかもしれない。

自室に入り、電気とヒーターを付ける。
それからもう一度、改めてスマホを見てみた。



……読み返していると、何だかだんだんムカついてきたんですけど。


私が映画を観に行こうと行かまいと、あんたに関係ないのでは?

てか、もっと、フツー。
ちょっと切なくなったりするんじゃないの?
私みたいに。

少しはショックを受けて、ボーリングとかバッティングセンターとか行くんじゃないの?
私みたいに。



「だから、何?
あんただって、女連れだったじゃん」



精一杯のイヤミを打つ。



拓史<「あー。女っていうか、紅ね」



……女っていうか、紅?
紅っていうか女でしょ!

どうしてこうもこの男は、まったく無邪気で無神経で無自覚で!
ムカつく!



拓史<「ケーキ食ったか? あんまり食うとまた太るぞー
メリクリ!」



……メリクリ?
メリ、クリ、だと?

私のイライラはMAXに達してくる。

ああ!
視界に入る赤いソファーが忌々しい!

ていうか!
この間まで拓の顔写真だったラインの写真設定が、毛深い足の指をマジックで毛虫仕立てにしたドアップ写真になっててマジでイラつく!

私が泣きながら夜を過ごしてたり、切なくて胸を痛めてた時に、足指に落書きして写真撮ってるとか!

ない!
断じてない!!










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