芸術的なカレシ





「ほっとけ! ばか!」



実際に声に出して、返信をする。
それからスマホを赤いソファーに放り投げた。

スマホはバウンドして、カーペットの上でゴツンと鈍い音を立てる。


バカみたいだ。
バカみたいだ。
バカみたいだ。
誰がって私が一番!

あんな無神経な男のために、こんなにこんなに胸を痛めて。
涙を流して。
他人を巻き込んで。
お見合いまでして!

何だったんだろう。
私の切なかった時間を返せ!
悲しんでいた時間を返せ!

そして嶋田くんに謝れ!!



ブーッ、ブーッ

カーペットの上で、私のスマホはラインを受信する。

何だかんだ言いながら、返信が気になってスマホを拾い上げる私。
誰が見ている訳でもないのに、コソコソしてしまう。



拓史<「ほーい」



……ほーい?
ほーい、だと?

しかも、Vサインの絵文字スタンプつき!?
イラ!!


馬鹿馬鹿しい。
馬鹿馬鹿しくて涙が出てくる。



「ムカツク!」


赤いソファーに思いきりケリを入れる。

ボフッ……


「いったー!」


強く蹴りすぎて足首を捻った。
あまりの痛さにうずくまる。

痛くて情けなくて、また涙が出てきた。










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