芸術的なカレシ
「うう……
幸せになってやる……」
足首を押さえうずくまったまま、私はそう呟いてみる。
そう。
こんなことで一々動揺することもないくらいに、幸せになってやる。
拓が居なくても、私はこんなに平気なんですよーって、平然と日々を過ごすんだ。
あんなバカ男に、心を乱されてたまるもんですか。
もう終わりにしなきゃ。
あの男は変わらないし、私も変わらない。
それなら変わらないままで、私だって幸せにならなくちゃ。
結婚しよう。
拓以外の人と、幸せな結婚をしてみせる。
子供を3人くらい産んで。
立派なお母ちゃんになって。
かわいいおばあちゃんになるんだ。
私の未来に拓なんかいらない。
必要ないんだって、見せつけてやらなきゃ。
今に見てろよ!
バカ拓!
私はまたスマホを放り投げる。
今度は、ソファーの上で静かに転がったスマホ。
その上に、もう視界に入らないようにクッションを被せた。
私の心は一喜一憂。
忙しすぎて自分が疲れる。
「もう風呂入って寝よう……」
もはや、今日がクリスマスだとか拓が紅と過ごしているかもしれないとか、もうどうでもよくなっていた。
なるようになれ。
時は流れる。
私の知ったこっちゃない!