芸術的なカレシ






「あはは、拓らしいわ!」



目の前で大口を開けて笑っているのは、ゲイのいい男と婚約中の親友。



「笑い事じゃないんですけど……」



呟きながら、生卵を割る私。



「でも、ほーんと、拓史くんらしいわよねえ。
あ、明日香ちゃん、ご飯、おかわりは?」


「あっ、おばさん、ありがとうございまーす」



今日はすき焼き。
久しぶりに明日香が遊びに来ると知って、母親は肉を奮発した。

今日は25日。
我が家では一応クリスマスパーティー。
赤ワインで乾杯。
小さなクリスマスツリーも飾ってある。
けれど、話題は専ら昨日の出来事。
ただの冷やかしパーティーだ。



「この際、嶋田って男でいいじゃん」


母親の前でも明日香は歯に衣を着せない。
母は、明日香のそういうところが好きらしいけど。



「そうねえ。
優しいだけの男じゃ物足りない気持ちも、わかるけどねえ」


ため息混じりの母。
いや、物足りないなんて言ってないし。


「そりゃあおばさん、あんな男と10年も付き合ってたら、他の男じゃなかなか満足できませんよー」



……満足?
満足不満足の問題なのか?



「でも結婚生活に刺激はいらないと思うのよね。
まあ、おばさんも、結婚してないからわかんないんだけど」



「いえいえ、私もそう思いますよ」



ゲイと結婚する人が何を言うか。
当のフレディは、新しいボーイフレンドとクリスマスデートらしいけど。
どうなってるんだか。











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