芸術的なカレシ





「あれ、ところで明日香ちゃん、彼は一人で大丈夫なの?」



「 ああ、フレディなら、今日はboyfriendと一緒です」



「ボーイフレンド? あら、そう。
男同士のクリスマスも、まあ、いいわね」



「……」



男同士、とは言っても、母親が想像していることと実際とでは、かなり食い違っていると思うけど。
知らぬがなんとか、面倒なことには蓋をする主義。
あ、臭いものには、か。



「でも、もっと落ち込んでるかと思ったけど、元気ね」


「うん、落ち込むのも悲しむのも、バカらしくなってきた」


「あー、わかるー。
この年になると、切ないのとかめんどくさいよね」



……私はつい昨日まで、その面倒な感情に肩まで、いや頭までどっぷり浸っていましたけど。



「そう?
おばさんくらいになると、切ない気持ち、取り戻したくなるけどなあー」



「おばさん、まだまだイケますよ!
彼氏作っちゃいましょうよー」



「あら、そう?」



えへへ、と、母親はまんざらでもない笑顔。

はいはい。
いいですね、あなた達は。


結婚が決まっている女。
結婚を諦めた女。
結婚したい女。
三通りの女達が、すき焼き鍋を囲む。


一体誰が一番幸せで、一番不幸なんでしょう?

そう一概には、決められない。










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