芸術的なカレシ
ウエルカム?
「あー、久しぶりにおばさんのご飯ごちそうになったー!
やっぱり旨いわー」
赤ワインとワイングラスを持って、部屋で飲み直すことにした私達。
明日香は一杯になったお腹を擦りながら、赤いソファーに座ろうとする。
「あー!! ダメダメ!
そこ、座っちゃダメ!」
「えっ!?」
「その赤、拓のバカが塗ったのよ。
画材が悪かったみたいで、服に赤い粉がつくの」
「あっぶない……
私のMIUMIUのワンピが汚れるとこだったわ……」
ミウミウだかミューミューだか知らないけれど。
そんな高価なワンピをわざわざ着て来なくてもいいのに、と思う。
まあ、スレンダーな明日香によく似合ってるけど。
「捨てちゃえば?
こんな座れないソファー、置いておいたって、邪魔なだけじゃん」
……捨てちゃう?
ああ、考えもしなかった。
捨てるなんて。
そうか、捨ててしまえばいいのか。
「捨てれないんでしょ?
あんたの、そういう執着心、悪いところだと思うよ」
「そんなこと、ないけど……」
そう、そんなことない、多分。
面倒なだけ。
けれど確かに、イライラしながらも、この赤の存在感に安心を感じていた自分も否めない。
拓がここに居る証、居た証。
どこかでそんな風に考えているのかもしれないな。