芸術的なカレシ
こうくんのボルボで、ちょっと離れた有名な神社へ初詣に行った。
予想通りだけど滅茶滅茶混んでいて、はぐれないように私達は手を繋ぐ。
学生じゃあるまいし、今更手を繋ぐくらいで、と思いながら、私の心臓はドキドキと高鳴った。
血液がみんな手のひらに集まってくるみたい。
……ああ、拓と知り合った頃も、いつもこんな風にドキドキしていたっけ。
一挙一動が気になって、表情を盗み見ては裏を探ってた。
けれど裏なんか全然なくて、あいつは至って単純。
考えることはすぐ顔に出るし、遠慮なく口にも出す。
だからそのせいで敵も多かったんだ。
教師を辞める羽目になったのも、あいつの自由奔放な発言が原因だったし。
何でも言いたい放題言っちゃうから。
立場とか常識とか目上だとか後輩だとか、そういうのどうでもよくて。
けれど、その物怖じしない態度がカッコいいとか、大雑把な性格が男らしいとか。
昔から、よく女にはモテたなあ。
それで私がどれだけ嫌な思いをしたか!
だから携帯やスマホのチェックなんか絶対にしなかったんだ。
それなのに、あんな所にわざわざスマホを置いておいたりするから……
「……――ない?
って、瑞季ちゃん?」
「ふあい!」
名前を呼ばれて我に返ると、私の顔を覗き込むこうくんの顔がある。
「え? 今、聞いてた? 僕の話」
「わ、わ、ごめんなさい。
何でしたっけ」
「やっぱり、聞いてなかったね」
こうくんは苦笑い。
元カレの思い出に耽って、隣に並ぶ人の話を聞いてないとか……
ダメすぎる、私。