芸術的なカレシ






「明日香は、結婚から一番遠い女だと思ってた……」



「わたしもね、そう思ってたわよ。
自由な恋愛を、求めてるし」



求めてるって、まさかの現在形??
私が不思議そうに見つめると、明日香はクスリと笑い得意気に言い放った。




「実は彼ね、ゲイなの。
他の男と、やりたい放題」


「ぶっ」




あはあはあは。
ゲイって、あのゲイ?
って、他にどんなゲイがあるのか知らないけど。
真顔で聞いてられない話だわ。
やりたい放題って……
まあ、明日香らしいと言えば、らしいような気もしないでもない、けども。



「あ、フレディっていうんだけどね、彼。
絵に描いたような青い目に金髪。
とってもhandsomeよ」



ハンサムだけやたらイングリッシュな明日香の声を聞きながら、私の心はもはやどこか遠くへ旅立ってしまっていた。

ゲイだろうがフレディだろうがハンサムだろうが、もうこの際何でもいい。
私の知ったこっちゃない。
もはやなんでもいいけれど、明日香が私より先に結婚してしまう。
その事実が忌まわしすぎる。



「わたし達には、男好きという共通点があったわけ。
しかも好みは正反対!
フレディは日本で仕事がしたいんだって。
これから二人で、アパレル会社を立ち上げるつもり。
でも偽装結婚とかじゃないのよ?
わたしは人として、フレディをrespectしてるし、愛してもいるの。
結婚という形が二人にとってbestだったって、それだけなの」


それだけ……
私がこんなにも焦がれている結婚が、それだけ、だなんて。







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