芸術的なカレシ
手に取ってみる。
サラサラとした生地が気持ちいい。
値段の割には高級感があるな。
うーん、でもサイズがよく分からない。
靴やバッグも合わせて置いてあった。
シャンパンゴールドのふっくらしたハンドバッグに、ヒールのあまり高くないゴールドのパンプス。
小さなパールリボンが付いている。
か、か、かわいい……!
かわいいけれど、こんないかにも女の子なアイテム、私に似合うだろうか。
このコーディネートでパーティーに出たら……
拓はどんな風に思うんだろう。
この期に及んで、まだ拓のことを考えている自分に嫌気が差す。
私がワンピースを鏡の前で自分に合わせながらうんうん唸っていると、こうくんが人混みから顔を出した。
「瑞季ちゃん、いいのがあった?」
「これ、どうかなって。
でも、似合うかどうか分からなくて」
「いいじゃん! それ。
試着してみれば?」
こうくんに促されてサイズ違いを二枚手に、試着室へ入る。
試着するにも行列に並んだ。
「悪くない……かな」
着てみると、思った通り体型をカバーしてくれるデザイン。
丈も長すぎず短すぎず。
試着室を出て、遠目で鏡に写してみる。
全体のバランスもいいかな。
髪を切っちゃった方が似合うかも。
「いいじゃん!
瑞季ちゃん、よく似合ってる」
試着室の前で待っていてくれたこうくんが、パッと顔を輝かせてくれた。
「そう、かな」
そう言われると、満更でもない気持ちになる。