芸術的なカレシ
「そっか、ちょっと強引だったかな。
ごめん……」
「そんな、謝らないでください。
本当に、気持ちは嬉しかったんで!」
ハンドルを握るこうくんの表情が少し曇った。
そんな顔されると、こっちまで悲しい気持ちになっちゃうんだけど。
……余計なことだったかな。
黙って買ってもらった方がよかったんだろうか。
「そういうところ、なのかな」
「え?」
「僕のダメなところ」
ダメなところ。
こうくんがそう呟くと、私の胸もチクンと痛む。
「ダメっていうか……」
「優しさの履き違い。
勘違いのお節介」
こうくんは自虐的に苦笑する。
「そうかもしれないけど……」
ああ、うまい言葉が見つからない。
こうくんも私と同じように、過去の恋愛を重く引きずっている。
前の彼女に投げ掛けられた言葉を、いつまでも背に追って。
それじゃダメなのに。
ダメなのに……と思うだけ。
「けど、それは……
言葉にすれば、解決する、小さなことです」
「小さなこと?」
「そうです。
彼女が、それは優しさじゃないよって、言葉にすれば、済むようなことですよ。
私みたいに」
「そうかな?」
「そうですよ。
履き違えなんて、誰にでもあります。
違うよ、そうじゃなよって言えれば、それで済むんです。
ダメだなんて、そんなことないです」