芸術的なカレシ
それから明日香と少し話をして、(ドレスも誉めてもらった!)
旧友に挨拶し、私もパーティー会場から抜け出した。
拓のいない会場でいつまでも一人で飲んでいるのも、何だか気が進まない。
外国人に英語で話しかけられても困るし。
レストランを出てスマホを確認すると、バカ男からの着信と、こうくんからのラインがあった。
着信があることは知っていたはずなのに、その名前が私のスマホに表示されていることにドキリとする。
拓からの着信履歴をしばらく眺めてみてから、こうくんからのラインを開いた。
光樹<「いつでも迎えに行くから、遠慮なく連絡して」
遠慮なく連絡して、か……
シャンパンも2杯しか飲んでないし、それほど酔ってはいない。
歩くのも電車も面倒だけれど、拓の顔を見た後にこうくんに会いたくないというのが本音。
<「ありがとう! 大丈夫!
大学の友達と二次会行くかもしれないし」
自分でも何故だかわからないけれど、何となくそんな嘘をついてしまった。
はあああ。
大きな溜め息が出る。
……私、ダメだなあ。
メチャメチャ未練タラタラで。
声を聞けば、直ぐにあのテンポに呑まれてしまう。
発する空気は、私を柵のない自由な態度にしてくれる。
まるで私は拓の一部みたいに。
拓は私の一部みたいに。
何も飾らなくていい自分でいられる。
というか、飾っても気付かれてももらえなかったし。
私は、誰とどんな風な結婚がしたいんだろう。
そもそも、結婚しないとダメなのか?
綺麗なドレスを着たい?
キラキラな笑顔になりたい?
もう30だから?
子供も早く欲しいから?
母親を安心させたい?
どれもこれも、私の横を素通りしていくような気がする。
私は……
いったいどんな自分でありたいんだろう。