芸術的なカレシ





大荷物を担いだカツオくんと、駅前のファミレスに入る。

ドレスアップした女と、家出少年かのようなドレッドビーサン姿の変な男。
どこからどう見てもワケわからん組み合わせ。
ファミレスの店員がちょっと挙動不審な態度だになった。



「マジラッキーっす!
僕、今、所持金438円なんすよ!
電車代しかなくて、晩ごはんどうしようかと思ってたんです」


無邪気な笑顔で懐にコロンと入り込んでくる、ワンコみたいなカツオくん。
拓とはタイプが違うけど、人懐っこさとちゃっかり具合はいい勝負だ。
だからなのか、カツオくんと一緒に居ても、こうくんと居るようなよそよそしさがない。

カツオくんと二人きりでご飯を食べたりするのは初めてだけれど。
拓と三人では、時々ご飯やお茶をしたことがある。




「わっ、瑞季さん、今日はめっちゃ綺麗っすね!
パーティーかなんかすか?」



コートを脱いだ私の姿を見て、カツオくんはわざとらしいくらいに驚いてくれた。
ああ、こういう器用なところ、拓も少しは見習えばいいのに。
誉められたら、誰でも悪い気はしないのだから。



「うん、友達のね、結婚パーティーで」



「あ、たっさんもパーティー行くっていってました!
それすか?」



「そうそう。
でもアイツ、汚いつなぎ着て来てさあ」



「ああ、なんだ。
言ってくれれば、僕、スーツくらい持ってたのになあ」



それは、灯台もと暗しというか。
なんと言うか。
拓もカツオくんがスーツを持っているとは思わなかったのだと思う。


何にしようかなーと、カツオくんはメニューを開く。
私はドイツビールとソーセージの盛り合わせを頼むことにした。
拓のために買い置きしてあったビールを飲んでいるうちに、私も最近ビールにはまってしまったのだ。
皮肉な話だわ。








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