芸術的なカレシ
「今日、拓にイベントのチケットもらったけど、ライヴハウスでやるんだね。
音楽がらみのイベントなの?」
ハンバーグの和風セットを注文し終えたカツオくんに、拓と同じ質問をしてみる。
「たっさんは何て言ってました?」
「ん、お楽しみ、だって」
「じゃあ、そういうことで!」
「……」
こやつ、完全に拓の手下だな……
「瑞季さん、もちろん来てくれるんすよね?」
「うーーん……」
拓が誘ってくれたイベント。
チケットまで用意してくれたけれど、ぶっちゃけまだ悩んでいる。
私に拓の芸術が理解できるかどうか自信がないし、それに、拓に会えば会うほど、私の気持ちが拓に固まってしまいそうで怖いのだ。
「瑞季さん来てくれなきゃ、たっさんガッカリですよ?」
「そんなことないでしょ」
だって、拓には紅がいるんだし。
「何言ってんすか!
そんなことありますって!
だって、たっさんが絵を描き始めたのって、瑞季さんが勧めたからなんでしょ?
なら、今回のは、絶対彼女さんに見てもらいたいはずです!」
「……は?」
いやいやいやいや。
え?
絵を描くことを、私が勧めた、だと?
「たっさん、いつも言ってますよ。
瑞季がいなかったら今のオレはなかったって。
まあ、酔っぱらってる時だけですけど」
「……な」
な、な、な、何を?
何を言っているのだ、カツオくんは。
「そういうの、いいっすよねー。
羨ましいっす!
ベストカップルっす!」