芸術的なカレシ






カツオくんはハンバーグを口いっぱいに突っ込んで、そこにまた白いご飯を運んでいく。
その、どこか小動物をも思わせるカツオくんの様子をぼんやりと見詰めながら、私はビールをチビチビ舐めていた。

えーっと。
何の話してたんだっけ?



「ビーサン、が?」


「はっへふはひぁひ、はへひゃいはふ」



白いご飯を口からポロポロこぼすカツオくん。
待ってください、食べちゃいます、って言ったのかな。
そんなに慌てて食べなくても誰も取らないのに。

熱々のハンバーグを平らげ、お冷やのおかわりを一気飲みした後、カツオくんはまたニカッと笑顔を見せた。
何て言うか、いい男じゃないんだけど、この可愛らしさが憎めないのだ。

私も通りかかった店員にビールのお代わりを注文する。



「ビーサンの理由、です!」


ビーサンの理由……
考えたこともないと言うか、あんまり知りたくもないと言うか。


「寒いんすよ、冬は、ビーサン」


「だろうね……」


そんなことは言われなくても想像するに難くないのですけど。


「でも、僕はビーサンなんです。
いつでも、どこでも。
それが僕なんです」


「……」


うーん、めんどくさいなあ。
拓もめんどくさいけど、この子もよっぽどめんどくさい。
だから二人は気が合うのだろう。
安いワインで夜明けまで語り合うらしいから。
できるだけそこには、お邪魔したくないものだわ。



「おまたせしましたー」


待ってました、ビールのお代わり。







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