芸術的なカレシ
「うん、相変わらず、バカだったよ」
「うふふ、あれは死んでも治らないからね」
……死んでも治らない。
不治の病ですか。
ああ、もしかしたらお母さん。
私のバカさだって同じかもしれません。
「……少し、痩せてたかな」
「ちゃんと食べてるのかしら?」
「どうかな、忙しいって言ってたし」
「また家にごはん食べに来ればいいのにね?」
「それは……できないでしょ」
そう、来たくても。
そう、呼びたくても。
「……まあ、でも。
あなたがどんな道を選んでも、お母さん、ずっと、瑞季の味方だから、ね」
「え?
どうしたの、いきなり」
真剣な顔で母がいきなりそんなことを言うのだから、驚く。
「いや、なんとなく、ね」
ズズズズ、と、今は私好みの豆に変わったコーヒーを啜る母。
完全に見透かされてるなあ、と思う。
「……どうしたら、いいかな」
「それは自分で決めなさいよ」
キッパリとした母の声。
自分で決める。
当たり前だ。
当たり前のこと。
けれど肝心なことに限って、選択を放棄したくなる。
ズルい生き物。