芸術的なカレシ
時間通りに現れたこうくんの笑顔は、二日酔いの私には眩しすぎた。
しかも今日は快晴。
軽快に走るボルボの窓から差し込む、容赦ない太陽。
日光が痛い。
「大丈夫? もしかして二日酔い?」
心配そうに助手席に座る私の顔を覗き込んでくれるこうくん。
ああ、その爽やかさを、少しでいいから分けてほしい。
「はい……
ちょっと、飲みすぎたみたいで」
「あはは、はしゃぎすぎたのかな」
残念ながら、その逆です。
ファミレスでカツオくんと飲んで、家で一人んで、全くはしゃぐタイミングなどはございませんでした。
「あはは、そう……かな」
けれど、曖昧に笑って見せる。
お互いをさらけ出して、少しずつ理解し合うつもりでいたのに。
昨日から私は、こうくんを誤魔化してばかりいるような気がする。
自分に言い訳できないくらい、私はそれに気が付いていて、気分もだんだん滅入ってきた。
頭も痛いし。
「今日は、ちょっと行ってみたい所があるんだけど、いいかな?」
「あ、はい」
今日はフリーな約束。
けれど、どうやらこうくんにはプランがあるらしい。
行き先を決めなくていいというのはとても楽。
できれば今日は、何も考えたくない。