芸術的なカレシ
車を走らせて、約15分。
赤いボルボが連れて行ってくれたのは、煉瓦造りの洋風な建物だった。
「ここだよ」
お洒落な所。
レストランか何かかな?
まだ食事をするには早いけど。
道を挟んで向かいにある、大きな駐車場に車を停める。
ドアを開けると、冷たい風が頬を刺した。
綺麗に蔦が這った、あまり高くない外壁。
敷地は広そう。
外壁に沿った長い花壇があって、綺麗な花が咲いている。
この花は何だろう。
パンジーかな。
空を見上げると、煉瓦造りのずっと奥。
ベルの付いた三角形の先に、スッと伸びた十字架が見える。
十字架?
ということは、ここは……
「結婚式場なんだ」
『garden palace アンジュ』
筆記体のような文字でしゅるりとそう書かれた金属製の看板が目に入る。
……アンジュ?
ああ、そういえば、いつかテレビで見たことがある。
ガーデンパレスアンジュと言えば、この辺りでは人気の結婚式場だ。
いつかはこんな所で拓と、なんて、夢見てた頃もあった。
「見学できるんだって。
ちょっと気分転換に、いいかなと思って」
そう言って、こうくんが照れ笑い。
気分転換……
気分転換か。
憧れの結婚式場に来ても、私のテンションが上がらないのは、二日酔いのせいなのかな。