芸術的なカレシ
「残念だね、式が立て込んでて、教会の見学はできないって。
ゲストハウスも、今日はいっぱいらしいよ。
さすがだね」
スタッフの女性が席を立つと、ぼんやりして話を聞いていなかった私に、こうくんがそう教えてくれた。
「ここは全て孤立したゲストハウスになっていて、プライベートガーデンがあるらしい。
1日限定3組。
来週、見学会をするらしいけど。
今、そのチラシとパンフレットを持ってきてもらってる。
今日は中庭を少し散歩しても構わないって。
どうする? 少しドレスを見たら、行ってみようか」
私の視線がドレスに向いているのを、こうくんはちゃんと見ていたようだ。
「そうだね。
中庭、お花が綺麗に咲いてた」
「うん、気分もスッキリするかも」
スタッフの女性が運んで来てくれたコーヒーを戴いて、私達はショーケースに飾ってあるドレスとタキシードの前に立った。
女の子なら誰でも一度は憧れる、プリンセスのような白いドレス。
それから、シックなブドウ色のカラードレス。
どれもこれも刺繍や装飾がとても綺麗。
ドレスに合わせた白いタキシードと、光沢のあるグレーのタキシード。
どちらを着ても、拓には笑えるほど似合わないだろうな。
それで喧嘩になるの。
こんなもん、着れるかー!って。
それで紋付き袴になる。
私はドレスなのに、アイツは紋付き袴。
あはは、和洋折衷もいいとこ、どんなカップルだよ。