芸術的なカレシ
……違う気がする。
と、こうくんの横顔を眺めながら思う。
いや、これから先何があるかは分からないのだから、こうくんと結ばれる日がもしかしたらあるかもしれないけれど。
もしそうだとしても、私はこの気持ちに、しっかりとピリオドを打たなければいけない。
そうしないと、どうしたって前には進めないのだから。
……この気持ち。
拓への、未練。
「こうくん、あの……」
「少しは、スッキリした?」
私の呼び掛けが聞こえなかったのか、こうくんは私の声を遮って振り返る。
「……あ、うん」
「頭も、だけど、気持ちも」
「気持ち?」
そう、と、こうくんは眩しそうに目を細めた。
「悩んでたんじゃないの?
友達の結婚パーティーで、何かあったとか。
上の空だから」
「あ……」
本当に、この人はよく見ている。
確かに少しお節介なところはあるけれど、こんな風にリードされてしまうと、ついついその強さに甘えてしまいそう。
何を打ち明けても笑顔で聞いてくれるんじゃないだろうか。
うん、うん、と丁寧に相槌を打って、それから優しく頷いてくれる。
そうしてじっと、私が答えを出すのを待ってくれるんだ。
こうくんは多分、そういう人。
そういう人だから、これ以上傷付ける訳にはいかないのだ、と思う。