芸術的なカレシ
決意?





「座ろうか」



こうくんに促されて中庭のベンチに座る。
少し小高くなった丘の上にあって、小さなテーブルも置いてあった。
日差しが暖かい。



「よかったら、話してみて?」



前屈みになって、私の顔を覗き込むこうくんの表情は穏やかだ。
父親がいたら、こんな顔をして私の話を聞いてくれるのかな、なんて、そんな失礼なことを考えた。
父親、よりはお兄さんの年齢か。

どれくらい二人でそうして座っていただろう。
こうくんの優しい眼差しの中で、私は色々なことを話した。


拓のこと。
芸術のこと。
拓と結婚したいと思っていたこと。
けれどそれがなかなか叶わなくて、何となくイライラしていたこと。
そのうちに女の子の名前をスマホにみつけてしまって、何も聞けないでいたこと。
言い合いになって売り言葉に買い言葉で別れてしまったこと。
それでも会いたくなってアパートを訪ねたら、女の子と一緒に居たこと。
その子と拓がキスしているところを目撃してしまったこと。
友達の結婚パーティーで拓と再会して、イベントに来るよう誘われたこと。
一人で来るように言われて迷っていること。


それら全てのことを、こうくんは1つずつ飲み込むようにして、うんうんと相槌を打ちながら聞いてくれた。










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