芸術的なカレシ
拓とカツオくんの背後には、畳二枚分はありそうなほど大きなパネルが一枚ずつ。
そのパネルには、カラフルな絵の具の点々が散りばめられている
いつだったか拓に連れられて美術館に行った時に、あんな絵を見たことがある。
高校の美術の時間でも習った、有名な画家。
……ジャクソン、ポロック。
確か、そんな名前の画家だった。
キャンバスの上を自由に跳び跳ねたり滴ったりしている絵の具達。
作為的なのか、無作為なのか。
無作為の中の作為なのか。
作為の中の無作為なのか。
拓はその圧倒的な存在感に衝撃を受けていた。
パネルの横には背の高い脚立とバケツが置いてある。
拓とカツオくんは、各々大きな刷毛を1本持っていた。
和太鼓の音がリズムを刻む。
ドドドン、ドドドン。
腹に響く、低い音。
ドドドン、ドドドン。
そのリズムに乗って、拓とカツオくんはバケツに刷毛を突っ込んで、パネルに色を乗せていく。
拓は、鮮烈の赤。
カツオくんは、漆黒の黒。
各々のカラフルなパネルが徐々に、赤一色、黒一色に染められていく。
ああ、そうか。
R&Bは、レッド&ブラックの略だったんだ。
ドドドン、ドドドン。
パネルが全て一色に塗り終えられる頃、和太鼓のリズムが、じわじわと早くなる。